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各遺産の具体的取扱いについて

各遺産の具体的取扱いについて

札幌の行政書士法人Aimパートナーズです。

今回は、遺産分割における各遺産の具体的取扱いについてご説明いたします。


[目次]


◆各遺産の具体的取扱い

 ①預貯金

 ②現金

 ③株式の配当金・預貯金の利息

 ④賃料収入

 ⑤死亡保険金

◆さいごに



〇各遺産の具体的取扱い

遺産には分割対象となる遺産の他、分割対象とはならない遺産もあります。

実際の遺産分割において、各遺産がどのような取り扱いとなるのでしょうか。

代表的なものについて、いくつか詳細をご紹介いたします。


①預貯金

「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となる。(最大決平成28年12月19日)」とされています。

ただし、定期預金については、契約の要素として分割払い戻しが制限されています。

その為、共同相続人が共同して全額の払い戻しを求めざるを得ず、単独では行使する余地はないと判示され、これは定期預金債権や定期積立債権についても同様とされています。


②現金

動産として、遺産分割の対象となります。

遺産分割の対象となる現金は、金額及び保管者をもって特定することになります。

例えば、「被相続人が自宅で多額の現金を所持していたのを見た」、「被相続人の生前に預貯金が払い戻されている為、それが残っているはず」と主張する相続人がいるかもしれません。

しかし、被相続人と同居していた相続人がいる場合には、その相続人がその現金を保管している場合が多く、実際にはその保管していた相続人からの申告される現金が分割対象となる場合がほとんどであり、それ以外に現金の存在を立証するのは困難であるといわれています。

また、「被相続人の生前に預貯金が払い戻されている為、それが残っているはず」という主張がある場合には、前回の記事でお話した使途不明金問題として取り扱われることになります。


③株式の配当金・預貯金の利息

相続開始後に生じた株式の配当金や預貯金の利息は、分割対象となる遺産の“被相続人が相続開始時に所有”という要件を欠いています。

しかし、相続開始後に生じたものであっても、調停や審判でも「相続人全員の同意が必要である」という扱いはしておらず、主物と従物の関係と同様に、株式や預貯金と共に処理するのが相当であると考えられており、それらを取得する相続人が当然に取得するという取り扱いがされています。

ただし、株式の配当金については、通知書に支払期限が記載されていたり、定款で一定期間での支払い義務の消滅が定められていることが多く、遺産分割が長引くことが予想される場合には、当事者全員で協力して支払いを続けることで保管現金として取り扱うこともあります。


④賃料収入

相続開始後に発生した賃料収入についても、分割対象となる遺産の“被相続人が相続開始時に所有”という要件を欠いている為、原則として分割の対象遺産としては扱いませんが、実際には当事者全員の合意により、分割対象として取り扱われることが多いようです。

例えば、アパートやマンションなどの賃貸不動産を取得した相続人が、当然に相続開始後に発生した賃料収入の取得を主張する場合があるかもしれません。

しかし、「相続開始から遺産分割までの間に共同相続に係る不動産から生ずる金銭債権たる賃料債権は、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、その帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けない。(最一小判平成17年9月8日)」と判示されていることから、賃貸不動産を取得した相続人が当然に賃料債権を取得する事にはなりません。

もちろん、分割対象遺産として扱わずに、賃貸不動産相続後の固定資産税等を含む諸経費を考慮し、賃貸不動産を取得した相続人がそのまま賃料収入を取得する場合もあります。


⑤死亡保険金

死亡保険金の金額は大きいことが多く、被相続人が生命保険料を支払っていたということから、被相続人が形成した財産として遺産分割の対象になるのではないか、と考える人もいるかもしれません。

しかし、死亡保険金は、遺産分割の対象にはなりません。

被相続人が、特定の相続人を保険金の受取人と指定していた場合は、その当事者の固定財産となります。

生命保険会社は、被相続人との保険契約に基づき、受取人と指定された当事者に死亡保険金を支払うことになりますので、もしも当事者全員の同意があった場合も、遺産分割の対象とすることはできません

ただし、被相続人が保険金受取人として特定の者を指定していなかった場合、約款により被保険者(被相続人)の相続人に支払うものとされるのが通常である為、死亡保険金は各相続人の相続分に応じた固有財産となります。



〇さいごに

いかがでしたでしょうか。

いざ遺産を分割しようとした際に、当然遺産分割の対象となると思っていたものが、実は対象ではなかったという事があります。

上記の具体例を参考に、まずは①被相続人が相続開始時に所有し②現在(分割時)も存在する③未分割の④積極財産、という要件の当てはめを行い、一度、相続財産のうちどこまでが分割対象となるのか考えてみるのも良いでしょう。


上記に関するお問い合わせの他、遺言や相続に関するご相談・ご質問などがございましたら、行政書士法人Aimパートナーズまでお気軽にお問い合わせください。

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