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行政書士法人Aimパートナーズ
宅地建物取引業~自ら売主となる場合の8つの制限③~

幌の行政書士法人Aimパートナーズです。
今回も引き続き、宅建業者が自ら売主となる場合の制限に関するお話しをいたします。
[目次]

○制限③:手付金等保全措置
前回、自己の所有に属さない物件の売買の制限の中で、未完成物件の売買禁止の例外として「手付金等保全措置」という言葉を使用いたしました。
保証協会の業務についてのお話しの中 でも「手付金等保管業務」としてご説明済みですが、「手付金等保全措置」とは、宅建業者との取引において一般消費者が手付金を支払っている場合に、売買契約等の解除により手付金の返還を求めた際、確実に一般消費者が手付金を取り戻すことができるようにする為の制度です。
手付金等保全措置により手付金を取り戻す事例としては、下記のような場合が挙げられます。
~未完成物件~
宅建業者が自ら売主となり、買主である一般消費者に対し分譲マンションを手付金を受領した上で販売したものの、宅建業者の資金繰りが悪化したことで当該マンションを完成させることができなくなったことにより、買主が売買契約を解除したが、宅建業者は資金不足により手付金を返還できない場合。
~完成物件~
宅建業者が自ら売主となり、完成物件を買主である一般消費者Aに手付金を受領した上で販売したものの、宅建業者は別の顧客Bに対しても当該物件を販売しており(二重譲渡)、その顧客Bに対し登記の移転を済ませた場合。(不動産に関する物件の変動の対抗要件は登記であり、原則として登記がないと第三者に対抗できず、二重譲渡の優劣は登記によって決まることから、当該物件は顧客Bのものとなり、買主である一般消費者Aは売買契約を解除しても、宅建業者が資金不足等の場合には手付金が返還されない。)
このように手付金を返せない状態となった場合の為に、宅建業者は原則として、買主から手付金を受領する前に「銀行等の金融機関」との保証委託契約、「保険事業者(保険会社)」との保証保険契約、「指定保管機関(保証協会等)」との手付金等寄託契約、のいずれかの契約を結ばなければならないとされています。
これらの契約により、もしも宅建業者が手付金の返還 ができなくなった場合には、各機関から代わりに買主に手付金が返還されることになります。
ただし、保証協会を含む「指定保管機関」は完成物件の売買の際には問題なく依頼できますが、未完成物件の売買の場合には手付金等保全措置の依頼はできない点に注意が必要です。
※銀行等の金融機関および保険事業者(保管会社)は、完成物件・未完成物件を問わずに依頼が可能。
尚、以下の場合には手付金等保全措置はとらなくても良いとされています。
1⃣買主が「登記」を得た場合
2⃣手付金の額が一定以下の場合

未完成物件か完成物件かを判断する基準は、売買契約時です。
計算例としては、例えば1億2,000万円の売買契約を行った場合には以下のようになります。
⑴未完成物件 ⇒ 1億2,000万円×5%=600万円(1,000万円以下)
600万円以下であれば保全措置を講じることなく、手付金の受領が可能。
⑵完成物件 ⇒ 1億2,000万円×10%=1,200万円(1,000万円超え)
1,000万円以下であれば保全措置を講じることなく、手付金の受領が可能。
手付金等保全措置は、上記の限度額を超えた部分にのみ講じるのではなく、全額に講じなければなりません。
例えば⑵の場合で、1,200万 円の手付金を受領する場合、1,200万円全額に対し手付金等保全措置を講じる必要があり、限度額を超えた200万円についてのみ講じるわけではありませんのでご注意ください。
“媒介”の場合においても、手付金等保全措置の必要性の有無は「①宅建業者が自ら売主となり②買主が一般消費者」であるかどうかで判断することになりますので、売主買主の双方が宅建業者ではなく(一般消費者)、宅建業者は媒介をしているに過ぎない場合には、手付金等保全措置は不要となります。
○さいごに
いかがでしたでしょうか。
上記の通り、手付金等保全措置についても、宅建業者同士の取引においては適用されることはありません。
「手付金」という名称でなくても、契約の締結の日以後、物件の引渡前に支 払われ、代金に充当されるお金(中間金や申込証拠金など)は全て手付金等保全措置の対象に含まれる点にも注意が必要です。
上記に関するご質問・ご相談などがございましたら、行政書士法人Aimパートナーズまでお気軽にお問い合わせください。