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宅地建物取引業~自ら売主となる場合の8つの制限⑥~

札幌の行政書士法人Aimパートナーズです。
今回も引き続き、宅建業者が自ら売主となる場合の制限に関するお話しをいたします。
[目次]

〇制限⑥:契約不適合担保責任の特約の制限
宅建業法では、宅建業者が自ら売主となる場合には、契約不適合担保責任の特則が設けられています。
まずは、民法における契約不適合責任についてご説明いたします。
<第562条>
引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。
<第563条>
前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
一 履行の追完が不能であるとき。
二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
3 第一項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。
<第564条>
前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求並びに第五百四十一条及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。
<第565条>
前三条の規定は、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合(権利の一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときを含む。)について準用する。
<第566条>
売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。
<第572条>
売主は、第五百六十二条第一項本文又は第五百六十五条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。
「契約不適合」とは、売買契約において買主が引き受けたものが①種類②品質③数量④権利について、契約の内容に適合しない場合のことをいい、買主は売主に対し責任追及をすることができます。
この責任のことを、契約不適合の場合の売主の担保責任といいます。
責任追及の方法としては、以下の4つがあります。
1⃣追完請求(第562条)
⑴目的物の修補
⑵代替物の引渡し
⑶不足分の引渡し
※売主は、買主に不相当な負担を課すものでないときは、買主が請求し た方法と異なる方法による履行の追完が可能。
※不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は売主に責任を追及することは不可能。
2⃣代金減額請求(第563条)
原則として、相当の期間を定めて履行の追完(1⃣の⑴~⑶)の「催告」をし、それでもその期間内に追完がない場合に、はじめて買主は不適合の程度に応じ代金減額請求が可能です。
例外して、以下の⑴~⑷の場合は、催告なしで直ちに代金の減額請求が可能となります。
⑴履行の追完が不能であるとき
⑵売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき
⑶契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき
⑷前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき
※不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は売主に責任を追及することは不可能。
3⃣損害賠償請求 4⃣契約解除(第564条)
債務不履行の規定に従って、損害賠償請求や契約解除が可能です。
ちなみに、損害賠償請求には売主の帰責事由が必要ですが、契約解除には帰責事由は不要とされています。
ここまでが民法・宅建業法の共通規定です。
宅建業法で特則とされているのが、第566条の「目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限」についてであり、宅建業法では以下のとおり定められています。
<第40条>
宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法(明治二十九年法律第八十九号)第五百六十六条に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。
2 前項の規定に反する特約は、無効とする。
買主は、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときを除き、担保責任の通知期間内に不適合である旨を売主に通知しなければ、契約不適合を理由としては追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除ができなくなります。
また、原則として、民法の規定より買主に不利な特約は無効となりますが、例外として、担保責任の通知期間については民法の規定では、買主がその不適合を“知った時から1年以内”に通知が必要とされていますが、宅建業法の特則として“引き渡しの日から2年以上の期間内”とすることは有効とされています。
例えば、買主は「引き渡しの日から3年以内」に目的物の不適合について売主に通知が必要、という特則は有効ですが、「引き渡しの日から1年以内」という特則は無効となります。
無効となった場合には担保責任特約のない契約となり、民法の規定通り、通知期間は“知った日から1年以内”となります。
尚、当事者間において担保責任を負わない旨の特約も有効とされています。
ただし、この特約に関しても、売主が知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができないとされており、買主は責任を追及することが可能です。
○さいごに
いかがでしたでしょうか。
民法第566条及び宅建業法第40 条については、該当となるのは目的物の「種類・品質」について契約不適合がある場合に限られています。
数量・権利が不適合である場合には該当となりませんので、ご注意ください。
上記に関するご質問・ご相談などがございましたら、行政書士法人Aimパートナーズまでお気軽にお問い合わせください。