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行政書士法人Aimパートナーズ
特別受益の具体的取扱い③
札幌の行政書士法人Aimパートナーズです。
特別受益の具体的取扱いについて、①および②の記事に引き続きご説明いたします。
[目次]
〇特別受益の具体的取扱い
①不動産の贈与
被相続人名義の建物や宅地などの不動産の贈与は、原則として生計の資本としての贈与と評価される為、特別受益として認められます。
しかし、山林、固定資産評価が低額な雑種地など、生計の資本としての贈与として評価することが難しいケースもあります。
贈与を受けたものが農業等を行っていない場合に、田畑等の贈与を受けた場合も生計の資本としての贈与として評価が難しく、特別受益として認められない場合があるようです。
また、不動産の取得の為に被相続人が資金を贈与していた場合についても、不動産そのものの贈与を受けた場合と同様に考えますので、原則として特別受益が認められることになります。
ただし、通常、不動産そのものの贈与である場合、相続開始時の評価で特別受益額が確定しますが、不動産の売買代金の贈与である場合は、売買契約書や被相続人の預貯金口座の履歴などから判断することになり大きく異なる点である為、注意が必要です。
金銭の贈与と比べると、不動産の贈与は、不動産の登記記録に所有権移転登記がされている場合が多く明確であり、事実認定の判断がしやすいと言えます。
②土地の無償使用
被相続人所有の土地を無償で使用させてもらい、子がその土地の上に自己名義の建物を建て居住している場合、その土地は被相続人から使用貸借を受けていることになります。
使用貸借とは、当事者の一方(今回であれば被相続人)が無償であるものを引き渡すことを約束し、相手方(今回であれば子)がその受け取ったものについて無償で使用および収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することを内容とする契約のことです。
使用貸借の終了事由はいくつかありますが、その一つに「借主の死亡」があります。
その為、貸主(被相続人)の死亡によっては当然に使用貸借契約は終了せず、貸主の相続人が使用貸借の内容を引き継ぎ、無償で貸す状態が続くことになります。
土地の使用貸借を受けている今回のケースのような場合、建物を所有し今後も所有し続けるための土地の使用は、使用借権相当額の生前贈与であり、相当の経済的価値が与えられていたと考えられ、生計の資本としての贈与と評価することができるため、原則として特別受益として認められることになります。
この時、使用借権相当額は賃料相当額を基準にするのではなく、更地価格の1~3割程度を相当額とし特別受益額として考えます。
③建物の無償使用
被相続人所有の建物を無償で使用していた場合、土地の場合とは異なり、特別受益と認めらえることはありません。
例えば、社会人になった子が引き続き、実家(被相続人所有の建物)に居住を続けていたような場合に、他の共同相続人は自立し賃貸物件等に居住し家賃や生活費を支出してきた場合、特別受益の主張がされることがあります。
一見、土地の場合と同様、生計の資本としての贈与に思われがちですが、被相続人との同居、非同居を問わず、建物の無償使用には財産的・経済的価値はなく、特別受益と認められることはありません。
非同居には、被相続人が施設に入っていた場合や被相続人所有のアパート等の一室に無償または低賃料で居住していた場合が含まれますが、通常の賃料との差額についても特別受益と認められることはありません。
④借地権の承継
被相続人が借地権の設定を受けていた土地の上の建物を取り壊し、借主を相続人となる子に書き換え、子が自己名義の建物をその土地に建築したような場合には、借地権の承継がされたことになります。
被相続人が受けていた借地権の承継は、借地人の名義変更の際、権利金や借地権取得の相当の対価が支払われていない場合などには、借地権相当額が特別受益と認められることがあります。
もちろん、相続開始時に借地権の借地人名義が被相続人のままである場合、その借地権は分割対象となる遺産(分割対象となる遺産の範囲)となります。
しかし、生前に借地権を相続人に承継したり、借地権の対象となる土地を買い受けたりした場合には、その借地権は相当程度の価値を有する財産であり、生計の資本としての贈与と評価され、特別受益となる可能性があります。
〇さいごに
いかがでしたでしょうか。
特別受益の額が法定相続分や指定相続分を超える場合、その相続人に具体的相続分はありませんが、だからと言って超過分を返還する必要もありません。
その為、他の共同相続人は特別受益の超過額により、遺産の取得額が法定相続分や指定相続分を下回ることになる点にも注意が必要です。
上記に関するお問い合わせの他、遺言や相続に関するご相談・ご質問などがございましたら、行政書士法人Aimパートナーズまでお気軽にお問い合わせください。