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行政書士法人Aimパートナーズ
寄与分の類型⑤
札幌の行政書士法人Aimパートナーズです。
今回は、寄与分の類型のうち、「財産管理型」についてご説明いたします。
[目次]
〇寄与分の類型
寄与分が考慮される内容は、民法で「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法(第904条の2)」と定められています。
<寄与分の一般要件>
・特別の寄与があること(特別性)
・対価を受けていないこと(無償性)
・特別の寄与によって、被相続人の財産が維持または増加したこと(因果関係)
寄与分の類型のうち、今回ご説明する「財産管理型」は上記の通常必要となる一般要件の他、「財産管理の必要性」および「継続性」の要件を満たすことが必要となります。
【財産管理型】
当事者である相続人が被相続人の財産を管理することにより、“被相続人の財産の維持又は増加”された場合に該当します。
具体例としては、当事者である相続人が、被相続人が所有する賃貸不動産の管理を代わりに行っていた場合、被相続人が所有する農地を代わりに耕作していたような場合が挙げられます。
「財産管理型」の寄与分が認められる為には、まず一般要件の「特別性」の部分で、被相続人と相続人の身分関係や親族関係に基づいて、「通常期待される程度を超える貢献」がされている必要がある為、被相続人が所有する不動産の草刈りやごみ拾い、被相続人の不在時に建物内の空気の入れ替えや清掃を行った程度では「特別性」の要件を満たさず、寄与分として認められることにはなりません。
また、賃貸不動産の管理では、共用部分の清掃や電灯の取り換え、敷地の草刈り・雪かきなどの他にも賃借人及び近隣住民からの要望・苦情の対応をしたことについて寄与分が主張されることがあります。
しかし、賃貸不動産の管理については、管理会社に管理委託することが多いのが現状であり、通常、管理会社が行うであろう賃借人の募集及び契約締結、賃料の管理、賃貸不動産の清掃、賃借人への鍵の受け渡し対応等について、被相続人が管理会社にそれらの賃貸不動産の管理について委託しておらず、かつ、当事者である相続人が管理会社に賃貸不動産の管理を委託していた場合と同様の管理行為を行い、その結果として被相続人の財産を維持又は増加させたと認められる場合に限り寄与分の要件を満たすことになります。
管理会社の選定や契約締結、更新や変更などの手続きは本来、所有者である被相続人が行うべきことですが、当事者である相続人が被相続人に代わりそれらの行為に関わっていたような場合であっても、「財産管理の必要性」についての要件は満たさず、その行為によって被相続人の財産を維持又は増加させたということにもなりませんのでご注意ください。
また、該当の賃貸不動産を売却する為に賃貸人との立ち退き交渉を当事者である相続人が行った場合、売却の結果、被相続人の財産が増加したと言える場合には、立ち退き交渉の困難さや、相続人の対応内容によっては、財産管理型の寄与分と認められることもあると言われていますが、立ち退き交渉や明渡訴訟をするために弁護士へ対応を依頼した場合で、相続人が弁護士を探し出し被相続人に紹介をしたという場合は、実際に手続き・対応を行うのは弁護士であり、弁護士と委任契約を結んでいるのは被相続人本人となりますので、相続人には寄与分が認められる余地はないと言えます。
次に、被相続人の所有する農地を代わりに耕作していたことによる寄与分の主張については、その農地から収穫される農作物が自家用かどうか、農業の収入額などによって要件を満たしているか判断されることになります。
該当となる農地を第三者に賃貸していた場合には、発生する賃料によって被相続人の財産が増加し、農地自体も第三者によって耕作される為価値が維持されることになりますが、耕作したのは第三者である賃借人であり、相続人がその賃貸に関与していたとしても寄与分と認められることにはなりません。
そして、「家業従事型」「療養看護型」「扶養型」と同様に財産管理型の寄与分は「継続性」の要件を満たす必要があります。
被相続人の財産管理に該当する行為が相当期間に及んでいることが必要ですが、この場合も明確な基準は設けられておりません。
しかし、被相続人が入院していた期間のみ代わりに財産を管理していた、という場合などその期間が数か月程度であり比較的短期間であると言える場合には「継続性」の要件は満たしていないと言えるでしょう。
~寄与分の算定方法~
財産管理型の場合、寄与分の算定には以下の方式で算定することが考えられます。
寄与分=相当と思われる財産管理費用×裁量割合
賃貸不動産の管理の場合、通常、管理会社に委託した場合の費用は、賃料の1割程度までの金額が一般的と言われていますが、相続人が代わりに管理を行った場合には、被相続人との身分関係や親族関係に応じた裁量割合が考慮されることになります。
〇さいごに
いかがでしたでしょうか。
他の類型の寄与分が「特別性」や「無償性」などの要件を満たさない場合が多い傾向にあるところ、「財産管理型」の場合、「因果関係」の要件についても満たしていないと判断される場合が多いようです。
他の類型に比べると、主張されること自体が少ないと言える寄与分の類型ではありますが、被相続人に対する親切心などから行った対応であっても、各要件を満たさない限り寄与分として認められることはありませんのでご注意ください。
上記に関するお問い合わせの他、遺言や相続に関するご相談・ご質問などがございましたら、行政書士法人Aimパートナーズまでお気軽にお問い合わせください。